「クイーン・エリザベス2」体験記

世界一周クルーズ QE2〜旧婚の旅〜

2003年
藤沢市在住 永井 克衛様

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※PTS注:クイーン・エリザベス2は2008年秋に引退。

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かねがね、「一度は乗ってみたい」と願っていた世界の名船QE2が、久しぶりに日本にやって来る……と聞いて心が騒いだ。世界一周クルーズの途中、横浜に立ち寄り、鹿児島、台湾(基隆)を経て香港に向かうとのこと。

実は、私達の新婚旅行は1966年(この年にQE2は建造開始とか)のことで、APL(アメリカン・プレジデント・ライン)のプレジデント・ウィルソン号で横浜から香港までの船旅だった。当時の日本ではまだ高価で仲々口に入らない高級食材が、ふんだんにテーブルに登場し、自由に飲めるコーヒーや紅茶等と共に、私達はアメリカの豊かさを実感したもの。ハワイや北米で働き、休暇でマニラに帰るフイリピンの若者達が甲板で竹棒を操りながらのバンブーダンスに仲間入りしたのも楽しい思い出。その反面、船室の等級により船内の立ち入り可能エリアが厳しく制限されていることにびっくりした。
と言うことで、私達は自らの結婚生活と同年金のQE2で、かっての新婚旅行と同じ航跡を38年ぶりになぞってみようと思い立った。

いざ乗船してみて、一番嬉しかったのは我々が共通の趣味にしているダンスをふんだんに、それこそ毎夕食の食前食後に七日間というもの踊り続けて大いに満足したこと。優雅なメロディを奏でるQE2オーケストラ、船客へのダンスレッスンと共にワルツ・スロー・タンゴの素適なデモンストレーションを披露したリックとペギー・ニクソン、女性船客に人気の踊り達者で紳士揃 いのダンスホスト達……。QE2のボールルームでダンスを踊ってみたい……そんな夢も成就した。

1970〜1980年代に三度もQE2に乗ったというガールフレンドから、かねがね聞いていた船内の様子が何度かにわたる改装のせいかイメージと可成り異っているように思えたが、それでも船内のあちこちに明らかにかっての豪華さを偲ばせる片鱗が見受けられた。オフイッサーから、客室係、食堂のボーイ達に至るまで、その振舞いが洗練されていて、とてもきちんとしていながらも決して客に媚びない、これがキュナード社の伝統というものか……と感心。でもこれを冷たいと感じたり、差別と受けとる船客もいることだろうし、難しいものである。

私達の終点、香港は久しぶりだったが、超高層ビルが林立し、人の動きも活溌、中国返還前よりも表通りはキレイになったようだ。停泊中のQE2のデッキから眺める香港島の夜の光のページエントも美事なものだった。

こうして私達の旧婚旅行は目出たくお終いに。今年登場するクイーン・メリー2(QM2)にも、いつの日か乗船の機会が……と願っている。

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