「にっぽん丸」体験記

にっぽん丸のクリスマス

2007年12月
兵庫県神戸市在住 井上 彰様

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「12月のはるか前」の夏ごろから毎年楽しみに「待ちわびて」いることがあります。私には92歳で歩行困難な母親がいます。現在施設に入っていますが、日ごろの親不孝を一挙に挽回する!これが「にっぽん丸のクリスマス」なんです。例年、弟も含め三人のクリスマスとなります。

 さて当日勇んで出発です。日ごろは母が「私のベンツ」と称する手押し車でまるで「なめくじ」のような歩みの母ですので、上下船は車椅子の手配をお願いしています。港につくと手際よく車椅子が準備されており、優先乗船をさせてくれます。そして「おかえりなさい」のクルーの明るい声と共に船に入るとフィリピンバンドがクリスマスソングでのお出迎え、そして顔なじみのバンドマンが私たちを見て、笑顔で手をあげます。この瞬間から待ちに待った「にっぽん丸のクリスマス」がスタートです。母はもう夢見心地の顔になっています。

 船の中はクリスマスの飾りでクリスマスムード満点です。また母が特に待ち望んでいるのは「食のにっぽん丸」のおいしいお食事なのです。一般的にクリスマスディナーはどこも大いに力を入れますから美味しいのですが、にっぽん丸の場合、最初の食事である昼食から「とびきり美味」なのです。そして「朝食にも全力投球」とさすが「食のにっぽん丸」だけのことはあります。

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 さて紙面にはかぎりがありますので、クリスマスの素晴らしさは皆様の想像以上だと申し上げて、昨年から始まった「熱海」について述べてみたいと思います。昨年は熱海初寄港ということもあったのでしょうか、熱海当局の熱烈歓迎に感動しました。「ミス熱海」が神戸から乗り込んで、色々と説明してくれて、港につけば歓迎行事というのはさほど珍しくありませんが、弟と母が興奮したのは「熱海芸者衆」のサービスでした。

大勢の芸者衆のあでやかな着物姿にうっとりとしていましたら、何と一緒に記念撮影に応じてくれるのです。母にとって忘れがたい記念になったととても喜んでいました。そして熱海でのハイライトは「冬場の花火での熱烈歓迎」です。食事も終わり夜がとっぷり暮れた頃、甲板に大勢の人が上がって「今や遅し」と待ちわびています。そして「にっぽん丸の皆さんを歓迎します」とのアナウンスのあと、実に盛大に花火が打ち上げられました。

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「ワー」だとか「オー」だとか歓声があちこちで巻き上がります。夢のようなあっという間の真冬の豪華な花火大会でした。顔見知りのクルーズディレクタさん他大勢のクルーと素晴らしい乗客の皆さんの善意にささえられて、待ち望んだクリスマスクルーズは、その期待通りの内容で、駆け足で終わってしまいました。そして母にとっては大きな満足と「生きる希望」をしっかりとその頭に刻んだようでした。にっぽん丸さん本当にありがとう。

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